事件の始まり

〜アクシリア王国・〜

「嗚呼、神よ。アクシリア様よ」
 今日、神聖なるマーラー山のふもとほ町で事件が起きた。
 おおっと。俺はマーク・ドシア。年は23歳。職業は戦士。マーラー国上等戦士隊隊長である俺は、アクシリア様を幼い頃から信仰していた。「男のマークが!?」と3人の姉と母と双子の兄には呆れられた。それもいい思い出だ。
 ところで、事件とは猫がお魚を盗み、女性が追っかけたと笑い事のような事件ではない。上級戦士隊の者にしか扱えない事件。結構きつい事件。
 マーラー山のふもとにある町、ガステシアでたくさんの人が死んだ。それも、惨殺…。今日はその町に向かう。
「ここか…」
 残っていた住人、34人は全て遠くの町へ避難した。まだ町は片付いていない。
「ねえ、マーク。この人…」
 上級戦士隊の副隊長は、女だ。名をサンテシア=マロベールという。通称、テシア。彼女は、国の研究学者であった父親を何者かに殺され、復讐の為に強くなろうとしている。結果、副隊長まで上り詰めた。
「ああ。国の研究学者だ…」
「いやあああ!!!何で…?何でなの…?」
「テシア…」
「お父さんも殺された。同じ研究学者の、ダスファも…」
「ダスファ!?」
 ついこの間、研究科学国民栄誉賞をもらった男、ダスファ。なるほど。この死体はダスファか。いや、納得している場合じゃない。
「ともかく、俺らはここを片付けよう。身元不明の死体を町の中央にある、広場に集めてくれ」
「…分かりました」
 惨殺死体なので、身元不明者は多い。さてと町の住人を集めるか。

「嘘…」
「いやああああ!!!あなたぁぁぁ!!!!」
 様々な悲鳴が聞こえる。しかし、ひとつだけ身元不明のまま。
「教会のシスターみたいよ。町の人、皆知っている。名前を聞いてくるね」
「ああ」
 しばらくして、青ざめた顔をして帰ってきた。
「この国を昔、混乱に陥れた悪い魔女、リシアン=グーフス」
「はあ!?」
 俺がまだ2歳の頃だが、国は混乱の世になった。その魔女は、牢屋に入れられたとか聞いた。しかしな…死んだとは。
「上級戦士隊隊員、1と2と3に命ずる。今すぐ死亡者リストを持って、国王に会いにいけ。国にとって失ったら悪いものと良いものがある。よく確認して気をつけて行くように。」
「はい」
 俺の隣では、テシアが震えている。父親が死んだ時を思いだしているのだろうか。
「…同一犯かな?」
「どうしてだ?」
「お父さんもこんな感じに死んでいた。誰なの…?」
「…」
 魔女がやっていないとすると…。誰だろう?
「皆さん、町をあげての葬式を明日しましょう。その前にひとつよろしいですか?」
「はい」
「魔女、リシアン=グーフスはどういう感じでこの町へ?」
「ええと…『マスターが死んだ。私も犠牲になるかもしれない。大帝王様によって…』とか言っていましたよ?」
「マスター?」
 慌ててテシアが、一冊の本を持ってくる。
「お父さん、科学の研究の合間に、フェスミア教について調べてて…。この本にはマスターと大帝王と魔女がいると書かれている。マスターは教会のトップで、大帝王は、あちこちにあるその教会の神父、魔女は補佐と情報収集と敵を消すことが仕事」
 そして、深刻そうな顔で言う。
「ただ…。マスターが死ねば、自動的に、大帝王がフェスミア教のトップに立てるの。いずれ魔女は狩られてしまう…」
 俺も初耳だ。そんな宗教、命が惜しい。
「信者は?」
「今のところ、376人」
「そうか…」
 俺は訳わからなくなってしまった。