3.殺戮人形

 アステリアの遺産と呼ばれる、旧アステリア国。砂漠に埋もれた国。そこから生き延びた者が何人かいた。
 レミアたちを除き、科学者と貴族の娘の2人だけだった。
 そう、私は貴族の娘。いつでも気高く生きなければならない。科学者はよく分からない。私をこんな塔に幽閉して・・・。
 そもそもこの塔はアステリアの大貴族・ウォルスミア公の所有物だ。何の為に建てたのか王に問われたとき、答えを言いしぶり、のちに気にいらない奴を閉じ込めるための物だと判明した。
 もちろん彼は追放令と共に権利や財産剥奪までされ、晩年はイーヴェル国で過ごし、悲惨だったという。彼は追放されて5年で亡くなった。39歳で、別れた夫人には娘がいた。それが、私。
 あのあとお母様は別の貴族と再婚し、私は何とか幼少期は優雅に過ごせたものだ。
「おや、浮かない顔だね」
「どこに行っていたのよ」
「ふふ。どこでもいいだろう?」
 科学者の言葉なんて・・・
「キミを新しくするためさ」
 信用・・・しなければ・・・

 イーヴェル国の先には九尾狐国というのがある。そこの女王は不妊症に悩み、後継ぎの娘が生まれずに国民の信頼を失いつつあった。
 そこで著名な私に頼みこんできたというわけだ。一応、女王と王様と血の繋がりがあることにしなければならない。そんなことぐらい簡単に出来る。
 丁度良かった。生き残りがもう1人いて。
「で、私の娘は?」
「こちらですよ」
「んまあ・・・。今、この子は何歳ですの?」
「確か20歳です。知り合いから養子をもらったとすればよいでしょう。あ、自分らと血の繋がりがあるようにしたという施術はすでに受けていることも話しておいてください」
「分かりましたわ」
 愚かな国王夫妻だ。その発表のさいに私が国王夫妻を殺すというのに。
「ところで名前はどういたします?あなた」
「レミアでよいだろう」
「そうですわね」
 イーヴェル国王妃の名前でもあるその名前はこの辺りでは「華やかな女の子でいてほしい」という願いをこめてつけられている。
「さて行きましょう、レミア」
「はい、お母様」
 かつての大貴族の娘・レルアーシア=サン=イーヴァイス=ウォルスミアの面影はもう残っていなかった。

「え?今、何て言ったの?」
「だからアンダーソン国のような小さい国々が戦争をやめないんだ」
「もしかして・・・」
「兄たちなら的確に止めるだろうが、知性がないお父上のことだ。戦争に乱入し、勝とうとするだろう」
「・・・恐ろしい」
 私とヘリックは昼食を優雅に(?)楽しんでいた。
「ところで、この手紙、どうするの?」
「フェルアームか・・・」
「ね、それ誰?」
「最近、アンダーソン国の小さな村ばかりを襲う人造人間だと噂がたっている」
「ふうん。で、滅ぼされた村の数は?」
「25。アンダーソン国にある小さな村全部だ」
「・・・次は町?」
「だろうな」
 そのあとはとてもじゃないけど食事は食べれなかった。

「国民の諸君。我々王家に後継ぎの養子が出来た。名前はレミアだ。滅んだアステリアの生き残りでもある科学者が施術を・・・」
 その途端、何かが国王の目の前を掠めた。それは何回も続き、とうとう国王は倒れた。
 あとは女王だけか。ふん。中々簡単だな。
「死ぬのです」
「!?」
 女王の目の前には私の作った殺戮人形・フェルアームがいた。
「いいぞ、フェルアーム・・・」
 国民は泣き叫び、逃げ惑う。
 血で染まっていく王宮前広場。私はそこを堂々と歩く。
「ははは・・・!」
 母さんを殺したときから私は壊れたのかもしれないな。