果たされた約束

 トーシア王国の最北端側。旧オーギニオ国の跡地がある。大きな爆発音とともに消え去った国。
「この魔導師、目が見えなかったのよ。悪天候で」
「誰だろう・・・」
 誰もわからない謎の者。黒髪ね…。
「あら、お母様。このお方は、最近有名な占い師・カミーラですのよ」
「…カミーラ?」
「ええ。彼女は魔力に優れ、将来は宮廷に仕える身になってもよいだろう、と期待されていたんですの。しかし、突然姿を眩ますのです。そして、彼女が消えて5年…オーギニオ国は滅んでしまいました。一昨年、姿を現しました。美しい女性占い師になって…」
 そういえば、シンシアは歴史とか人物歴史得意だったわね。私は微笑む。
「あの…あれが私の…」
「ええ、そうよ。シャノン。さあ、久々の再会…」
「サチュア王妃ですね。生きていたのですか…」
 顔を伏せたまま歩いてくるきらびやかな女性。そう、最後のサチュア王妃。
「久しぶりね…シャノン」
「お母さん…!」
「私は、思い出が消えていくのに耐えれなかったの。だから…孤児として、あなたを捨てたの」
「お、お父さんは!?」
「元気よ。ああ、ここが…私の国」
 あのときの謎の爆発。さっきのカミーラも関係するのかしら?
「ねえ、シンシア。24年間行方不明だったんでしょう?一体、彼女はいくつなの?」
「26年前、13歳でしたの。つまり、今は結婚していてもおかしくない年ですわ」
「そう…」
 カミーラのこと…知っているのかしら?サチュア王妃とシャノン王女は。
「お母さん?顔、どうしたの?」
「爆発の影響がね…。今、リハビリ中よ」
 顔をあげる王妃。醜い顔だった…。あの美しい王妃の顔。私は憧れていた。
「サチュア王妃、シャノン王女。カミーラを知っているかしら?」
「ええ。よく晩餐会などに招いていたわ。占いもしてもらったわ…」
「そう…」
 つまり、王宮にはよく訪れていたことになる。そう…なのね。
「あら、王妃。お久しぶりですわね」
「カミーラ…」
「あの晩、約束していたことを果たしに参りました」
「…そう。でも、21年前のことよ?出来るの?」
「ええ…。それはもちろん」
 妖しげな笑みを浮かべるカミーラ。私は震えた。美しい容姿をしているものの、考えることは凄く深い。
「もう帰っていいわよ。シャノンとカミーラ以外帰りなさい」
「ええ、分かりましたわ」
 震えるシンシアの手を取り、馬車に乗った。

「…覚えているかしら?あの魔法をもう一度という約束」
「ええ。その結果、国を滅ぼした」
「悪かったわね。事故よ。大きな魔力がいきなり関与してきたの」
 私は考える。魔力が大きい者…。誰かしら?
「色々、ブランヴィリエ伯爵夫人に聞いた方がいいかもしれないわ。彼女の本名知りたいし…」
「そうね。さて、もう一度とはいかないの?」
「もう十分見ているでしょう」
「…そうだったわね」
 ニコりと私は微笑んだ。