第2話 セーピアン一族とリルアール一族

「さ、帰ろー♪」
「リン!またサボるの?」
「ぎくっ」
「んもう!そのサボり癖なおしてよ!ねえ、レンくん」
「ああ」
 リンと俺とマユは合唱部に所属している。だが、リンは顧問の先生からお呼び出しをくらうほどサボり、密かに実力はあるけどバカなサボり先輩と呼ばれている。
「そういうことなら合唱部やめることをおすすめするけど?」
「ひいっ!ハ、ハク先生!」
 普段は酒を飲みながら弱音を吐きまくるハク先生。でも、生徒に対しては結構気が強い。
「いい?いくら実力があっても欠部するのはよくないと思うわ。次のコンクールに出たければちゃんと来なさい。あとはマユさん、任せたわ」
「はい」
 よく先生は私用でいなくなる。副部長であるマユが先頭に立つ。
「もうすぐ夏のコンクールについて考えないとね。皆はどうしたい?」
「私はパーッと派手にやりたいな」
「リンったら・・・却下」
 そのあとも意見が飛び交ったが、却下されていく。
「あの〜メロディという曲がいいと思います」
 控えめに発言したのは次の次の部長候補で1年生の初音ミク
「いいわね!うん、それで決定ね!どうですか、部長」
「あーいいと思うけど」
 ダルそうに答えるミキ部長。受験生で夜遅くまで勉強しているのか、くまがくっきりとできている。
「じゃあ先生に後で報告しますね」
「ああ、うん。任せたから。んじゃあ今日は解散で」
「やったあ!」
 リンが大声で嬉しそうに叫ぶ。皆笑う。
「マユ、ミク、レン帰ろ♪」
「ゴメンね、私用事があるから」
「ああ、そう。ミクー!」
「あ、リン先輩。帰りましょうか」
 ミクは両親が誰かわからない。たまたまここの学園の理事長が幼くして捨てられていた子を拾いミクと名付けただけ。
「んで、どう?両親捜し順調?」
「んーまああの時、一緒に置いてあった紙の字からするとお金持ちだろうって」
「まっさか〜金持ちが?」
「はい。よく分かりませんが」
「ふーん」
 楽しく会話していた。保健室の前に差し掛かると俺は誰かに捕まった。
「んぐっ・・・」
 何かの匂いを嗅ぎ、俺は意識を失ってしまった。

「えーと・・・ああ、この辺かしら」
 私はセーピアン一族について知る為に市立図書館に来ている。
「・・・」
『セーピアン一族・・・13年前に、当主の息子・キヨテルが行方不明になる。それ以降、妹のアンが夫と共に当主を支えている。アンの子供・リンとレンにはこの事実や自分達が名高い一族でさえ伝えていない』
「アンってかなりの心配性じゃないの・・・」
 でも、それも無駄。ルカお姉さまやハクお姉さまがいるから。
「あ!あれってメイコ先生じゃない?」
「本当ですね」
 現れたのはリンと・・・知らない子。レンはいない。
「あら、どうしたの?」
「レンがいなくなっちゃって・・・」
「まあ、それは大変じゃないの。学校の先生に言ってみたらどうかしら」
「はい、そうします」
 カイトはとうとう実行したようね。やるじゃないの。

「へえ、そう。決まったんだ」
「はい」
「で、ルカお姉さまの隠し子は相変わらず?」
「はい。頭のいいところはルカ叔母様やキヨテル様にそっくりです」
 メイコ叔母様やカイト叔父様には明かされていない秘密。それはルカ叔母様に隠し子がいること。しかも、敵のセーピアン一族の間に。
「ふふっ。あーそれにしても本当私はダメねえ。妹や弟たちに正当な結婚させてやれないなんて姉失格よねえー」
 出た。片手に酒の瓶を持ち、弱音を吐く。
 お母様は本当はハーリルクェイアという美しき名前だけれども、弱音を吐くことからハクと呼ばれる。
「うーマユ、酒のおかわり〜〜〜」
「メイコ叔母様が持っていきました」
「あんの妹・・・姉を不幸にさせんなバカ・・・って私にそんなこと言う権利ないかあー」
「さ、酒持って来ます!」
 慌てて走る。ルカ叔母様なら・・・!
「あーらマユ!私のかわいい孫!」
 カルおばあさまが現れた。うーこの人に聞くか。
「あの、酒ってありますか?」
「酒?まーたハクが飲んでるんだろう?確か倉庫にまだあるはずだ。メイコが持って行ってなければの話だが」
「ありがとう、おばあさま」
 倉庫まではかなり遠い。はあ。まったくあの2人の酒好きには呆れたわ。

「はいお母様、お酒です」
「あ〜ありがとうねえ〜」
「あの、ミクにいつ伝えるべきでしょうか」
「ん〜そうねえ〜ルカがその内行くからいいわよ〜多分」
「はあ、わかりました」
 とりあえず、叔父様の作戦が上手くいきますように。