4人の繋がり

「これがキヨの資料ね。あら?ずいぶんと裕子の資料少ないじゃない」
「孤児院からかき集めました。病院にも行かなかったようで」
「はあ。ちょっと作業員に聞いてくる」
 由菜さんは不機嫌だ。裕子さんは、自分の存在を消すかのように資料がない。
「はあ!?」
「本当です。1ヵ月ぐらい前から、リーダーは落ち着かない様子で・・・。しょっちゅう携帯を見ていました。直接私たちに工事の指示をするのも減りました」
「偶然なのかしら。倉田キヨが音信不通になったのも1ヵ月ぐらい前。あとは・・・大杉山裕子の謎ね!」
「あれ?作業着に何か・・・」
「あ、俺も」
「出して」
 俺も覗く。作業員43名の取り出した正方形の紙。1文字ずつ書いてある。
「1人1人に番号がありますから、その順に・・・」
「『た』『す』『け』『ろ』『。』『こ』『れ』『は』『ゲ』『ー』『ム』『。』『く』『ら』『た』『キ』『ヨ』『、』『お』『お』『す』『ぎ』『や』『ま』『み』『ち』『ひ』『こ』『は』『ひ』『と』『じ』『ち』『。』『ネ』『ソ』『ミ』『ア』『に』『こ』『い』『裕』『子』」
「ええ!?」
 しばしの沈黙。
 ネソミアというのは、廃工場などがある旧工場地帯。バブルの時、たくさんの工場が建てられたらしいけれど、90年代の初めから00年代の初めまでの間に全てつぶれた。工場に勤める人の家も空き家になり、恐ろしい場所。
「あんな広い場所に・・・?」
「騒ぐな」
 少女が銃を持って立っていた。由菜さんの目の前につき出されている。
「誰?ここは羽戸芽警察署よ、お嬢ちゃん」
「黙れ!私は大杉山華。倉田キヨと道彦の命がどうなっても知らないから」
「・・・わかったわ。誰が行けばいいの?」
「そうだな・・・。そこの若い2人に」
「え?」
 俺と誠。華さんが俺らの手を掴む。
「さっさと行くぞ」
 そんな華さんの横顔は赤かった。

 ネソミアは広い。羽戸芽の森というところの近くにある。倉田家の敷地側にまで。
「ここにいる」
 バブルが弾けてすぐにつぶれたらしい会社の工場。約30年前につぶれ、一番古い。そして凄い臭い。
「全てを吐きなさい!住田誠!」
「?」
 中から裕子さんの大声が聞こえた。誠が・・・?
「華のストーカー!どうしてそんなことをしたの!?不登校になったじゃない!」
「・・・」
「何故誘拐をした?」
 俺は黙っている誠を後ろにやった。
「倉田キヨは夫を殺した。道彦は、浮気を・・・!」
「ゆっくり話してください」
「ええ、話すわ。でももう大宮から主なことは聞いたんじゃないの?」
「え?」
「あ、では署へ・・・」
 人質になっていた倉田キヨさんと大杉山道彦さんを解放した。一体・・・大宮剛前理事長と何の繋がりが?

「ええ、頼まれました。夫は優という自分の姉と浮気をしていたと。殺してほしいと。ちょうど良かったですよ」
「今は、私と付き合っていました。でも私が捕まり、また別の人と・・・」
 大宮剛と大宮優実の証言。
「ほらね」
「・・・もう少し詳しく」
 俺は気落ちしている由菜さんの耳元で囁く。
「これが終われば警部補に昇格かもしれませんよ」
「うおっしゃー!」
 由菜さんは、警部補への昇格が夢。
「ふふふ。いつか姉さんとお母さんとお父さんへ復讐しようと思っていたの。そしたら、お母さんとお父さんが北海道にいるって聞いたから、早速行ったの。そしてお母さんのキヨにお父さんを殺すように命じた。あっさり殺してくれたわ・・・。道彦は昔から浮気をすぐする奴だった。それでも私は愛した。なのに、結婚して20年たつのに今だに私へ何にもくれない。憎くて・・・。そしたら昔から付き合っているのが私の姉だと知った。別れてくれなくて、大宮剛が私の姉を殺す計画を立ててると知ったの。そこで、私の分もしてもらったのよ。華も巻き込んで10歳の時から銃の訓練をさせたわ」
「・・・で、住田誠の関係は?」
「そうそう、彼は娘の元彼。私が別れてと言ったの」
「お母さん!私、もう我慢できない!銃何か・・・!」
「華!」
「裕子さん!!」
 華さんの投げた銃は、誠に向かって飛ぶ。そしてキャッチ。
「では預かります」
「はい」

 俺らは、全ての謎が解かれたと思っていた。しかし・・・。

 数日後、由紀のお見舞いに行くことに。
「あ、翔・・・」
「大丈夫?」
「うん。もう驚いたなあ・・・。まさかおばあちゃんが私を殺そうだなんて・・・」
「はあ!?」
 由紀は何が言いたいのかさっぱりわからなかった。