人形ノ子守唄

「この人形達は…?」
「彼女、日本に滞在しようとする前、フランスにいたんですよ。その時集めたそうです」
「アナタヲ 【ウヤミ】【ネタミ】 ワタシハ…」
「!?」
 寒気のする歌声。その声を出していたのは、由紀が欲しがっていた50万円のフランス人形。
「…。実はね、リリエンの遺書がここの部屋から見つかって…。それも昨年の12月に。その中には『嫉妬の子守唄を歌うフランス人形と悪魔のオルゴール以外は、売ってもいい。』というのが…」
「ひぇ〜」
「美術科だから…こういうのに敏感なのよ」
「ワタシヲ アイスルト ヤクソク シタノニ アナタハ アナタハ アナタハ」
「あら?壊れているのかしら?」
「みたいですね…」
 「アナタハ」を何回も言い、ケタケタ笑い続けるフランス人形。怖いな…。
「由紀、買わなくてよかったな」
「うん」
「…。それよりも、出る方法はあるかしら?」
「アケテアゲルワネ デモ ソノマエニ」
 さっきのフランス人形ではない、金髪のフランス人形が喋り出した。(ちなみに、さっきのおかしなフランス人形は、茶髪)
「ワタシタチ フコウノショウジョ ワカル?」
「はい。リリエンは、日本画でフランス人形を描いていました。それだけのために集められ、嫉妬の子守唄を歌うフランス人形以外はこの小さな部屋に押し込められました。やがて、嫉妬の子守唄を歌うフランス人形も捨てられ、不幸の少女の山となった…」
「ソウヨ アイツ ワタシタチヲ スグ ステタ エヲ カクタメ アツメラレタ ネェ ワタシタチノ オネガイ キイテ?」
 フランス人形達は泣きそうな目で見てきた。
「マズハ オハナシヲ…」